Windows Azure入門 の書評なんぞをしてみる
最近業務がデスマーチ気味で、書評したかったのですがすっかり遅れてしまいました。北海道への旅をした際に本書を購入し、同僚には「白い恋人」を北海道土産とし、自分には「Windows Azure入門」を北海道土産とした割と普通です。
Microsoftのクラウドコンピューティング Windows Azure入門
- 作者: 砂金信一郎,遠藤大樹,酒井達明,藤田昭人
- 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2009/11/27
- メディア: 大型本
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はじめに
最初に伝えたい内容として、同書はWindows Azureについてだけを解説した書籍ではありません。意味の揺れがちなクラウドサービスについて体系立てた説明をしており、他ベンダーとの対比やビジネス利用を視野に入れた解説もしています。また、クラウドサービスにおけるWindows Azureの位置づけを述べた上で、Windows Azureでの開発例まで、一連の内容が記述しています。
純粋にWindows Azureでの開発したい人間だけでなく、ビジネス利用を考えている人間に対しても価値のある書籍です。本書を一読する事で、Windows Azureを活用するポイントが見えてくるのでは無いでしょうか?
対象の読者
id:haru-tama さんともかぶってますが、「Windows Azure入門」の購入をお勧めしたいのは、以下の方々かなぁというのが個人的な見解。
- ユーザー企業のシステム部門の方:「クラウドってのが流行ってるけど、どういったサービス何だろう?」と思ってる方
- 営業さん:お客さんから「クラウドってどんな感じ?」と言われた際に、「クラウドってどんなのだっけ?」と回答に困る方
- プロジェクトマネージャ or アーキテクト:「クラウドにすると安いんでしょ?」や「今までのアプリケーションをそのままクラウドに乗せると勝手にスケールアウトするんでしょ」といった誤解をしてる方 or クラウドを組み入れたサービスの構築を考えたい方
- 開発者さん:これからWindows Azureを触りたくて、コーディング例を"参考程度"に眺めたい方
解説
同書はWindows Azureと銘打っていますが、内容としては「クラウド」、「IaaS」、「PasS」、「SaaS」等々の基本的な用語についても分かりやすい解説をしています。盲目的に「クラウドサイコー! → Windows Azureサイコー!!」といった記述をしている訳ではありません。Windows Azureというマイクロソフトが打ち出すクラウドサービスについての解説だけでなく、プライベートクラウドやパブリッククラウドといった中でのWindows Azureの位置づけや、AmazonEC2やGoogle App Engineといった他ベンダーのクラウドサービスとの差異を公平な立場で述べています。また、Windows Azureの提供方法と課金形態についても記載している為、Windows Azureのビジネス利用について検討している方にもお勧めです。
日本語でのドキュメントが不足しているWindows Azure上での開発について、Hello World から SQL Azureまでのコーディングサンプルを記述しています。一連のコーディングサンプルを眺めることで、Windows Azure上の開発イメージをつかむ事が出来ると思います。Windows Azure開発の窓口として、一読すると良い勉強になると思いますが、後述の通り若干情報が古い為、本書通読の際は注意してください。
注意点
「.NET開発テクノロジ入門 asin:4891006609」と比べてWindows Azureポータルサイト・Windows Azure SDKのバージョン等々について新しい情報が記載されていますが、PDC2009以前に書かれた書籍である為に若干情報が古く、一例として以下が挙げられます。
- Windows Azure SDKのバージョンがCTP版で在り、Windows Azure SDK 1.0の情報が載っていない*1
- PDC2009後にポータルサイトのコンテンツが追加されているが、追随しきれていない*2
同書を読めばコーディングイメージをつかむ事はできると思いますが、Windows Azure上で開発を行う際には、以下でPDC2009の情報をキャッチアップすると最新の「Windows Azure 開発手法」を学習できると思います。
日本語書籍(おまけ)
日本語でWindows Azureについて取り扱った物は、「Windows Azure入門」以外にも id:waritohutsu:20091008:1254952360 で紹介した 「.NET開発テクノロジ入門 asin:4891006609」が存在します。しかし、同書では以下の点でWindows Azureを勉強するには情報が不足しています。
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- Windows Azure SDKやWindows Azureポータルサイトは、同書発刊後に何度もバージョンアップしており情報が古い
- Windows Azureの内容は同書では付録扱い*3で記述されており、記述ボリュームと内容共に不十分
一方で、Windows Azure上で開発する際に必須となる基礎知識であるASP.NET、LINQ、ADO.NETと言った要素技術を分かりやすく&網羅的に解説している書籍でもあります。Windows Azure入門と合わせて、こちらも手に取ってみては如何でしょうか。
*1:StorageClient(ストレージアクセス)やDiagonostics(ログ関連)の使用方法が大幅に変更されている
*2:AppFabricやMarketPlace等
*3:同書はWindows Azure開発に特化した書籍では在りません